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アフガニスタンの子ども達2004

2010/09/21

東シナ海波高し尖閣諸島・中国漁船衝突事件

(2010年 9月20日 産経)

東シナ海波高し-。
沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の周辺海域で、
海上保安庁の巡視船に
中国漁船が衝突した事件に、
国際社会は懸念のまなざしを向けている。

その視線の焦点は、日中関係の悪化のみならず、
むしろ海洋覇権を追求する
中国の脅威に合わせられ、事件に対する
台湾での反響は、中台統一をめぐる
世論を映し出してもいる。

 ▼ストレーツ・タイムズ(シンガポール)

 ■木を見ず森を見るべきだ

 「1年でなんという変わりよう」-。
シンガポールのストレーツ・タイムズ紙(13日付)は
昨年4月の麻生太郎首相(当時)訪中の際の
友好ムードが、今回の中国漁船衝突事件で
反日へと急変する中国と、
日本の関係に戸惑いを隠さない。

 「中日関係-重要なことを先に」
と題した社説は、尖閣諸島をめぐる
問題の歴史的な経緯と双方の
主張を紹介したうえで、
「より深い所の(両国民の)感情が
両国関係を混乱させている」と分析する。

 つまり、「中国では今も
戦時中の日本軍の犯罪に痛みを感じ、
さらに日本を、中国を封じ込めようとする
米国の歯車のひとつとみている人が多い」。

これに対し、日本は「国内に(景気低迷などの)
悩みを抱え、一方で中国の経済力、
軍事力の増大にいらだっている」
とし、これが事態を悪化させているという。

 ただ、アジアには北朝鮮の核開発計画や
米国の影響力減退への不安、
新たな枠組みづくりなどの課題があり、
日中はガス田の共同開発のような
「実務的協力」を進め、関係悪化を避けるよう提案。
「両国は木を見ず森を見るべきだ」と
双方に冷静な対応を求める。

 一方、社説と別の寄稿記事では、
8月の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)
外相会議でASEANが、
南シナ海での中国海軍の活動に懸念を表明、
スプラトリー諸島などの領有権問題での
多国間協議を中国に求めた問題を挙げている。

 会議では日米がASEANを後押ししたが、
会議が終わると中国は、
同問題は2国間で協議するとの従来の姿勢を各国に示し、
巻き返しをはかったという。

 日米が手をこまねいているうちに、
次々に手を打ってくる中国にどう対応するのか。
シンガポールもまた苦悩している。(シンガポール 宮野弘之)

 ▼自由時報(台湾)

 ■政権、独立派で割れる世論

 尖閣諸島の領有権をめぐる
台湾の主張は、「中国は一つ」とする
馬英九・中国国民党政権と
台湾独立派とでは大きく異なる。

馬政権は中国から渡来した
蒋介石政権の衣鉢を継ぎ
「釣魚島は中華民国領」との立場を堅持。

対する独立派野党、民主進歩党(民進党)
は同島を「台湾領」と主張している。

 しかし独立派は台湾が
中国とは別の存在と主張することを最優先。
中国にのみ込まれないためにも
日米との連携を最優先して、
尖閣諸島の帰属問題は“二の次”にしてきた。

一方、李登輝元総統を
精神的指導者とする
第二野党の台湾団結連盟は、
尖閣諸島は「日本領」としている。

 このため台湾主要紙の主張も
国民党政権支持の聯合報、中国時報と、
独立派紙の自由時報では全く異なる。

 自由時報は16日の社説で
、馬英九政権が13日、
台湾の保釣(尖閣防衛)団体の抗議船出航を認めた
ことを「中国にこび、国際観を欠いた重大失策」
と厳しく批判している。

同紙は「1970年の沖縄返還協定で
米国が日本に釣魚島の『行政権』(のみ)を返還した」
ことが、その後の主権をめぐる
係争の遠因と指摘。

台湾にとって最良の方策は
「日本との主権の争いを棚上げし、
この海域の共同開発を進め、
台湾漁民の漁業権を確保することにある」と強調した。

 ところが馬政権は
「中国とは主権を棚上げして
14もの協力協定を結んでおきながら、
日本に対しては保釣(尖閣防衛)抗議船を侵入させ
、幼稚な挑発を行っている」と断罪した。

 対して国民党系2紙は
「釣魚島が中国領との点で両岸(中台)の利害は
一致している」(15日聯合報)と、
保釣での中台の対日共闘を呼びかける
識者の寄稿、論評を掲載している。(台北 山本勲)

 ▼ウォールストリート・ジャーナル(米国)

 ■東シナ海に潜む紛争の火種

 13日付ウォールストリート・ジャーナル紙は
今回の事件を、「中国の領土権の主張をめぐる
地域的な緊張の高まりを映し出している」
と指摘した上で、「今回の事件がどこまで発展するかは
不明だが、日中双方のナショナリストが
それぞれの政府に対し強い措置を取るよう
求めており、日中ともに引く構えはない」と分析した。

 「海をめぐる中国のもうひとつの紛争の火種」
と題した社説(同紙電子版)では、
「昨年は南シナ海の島々の領土権をめぐる
対立が大きな注目を集めたが、
同様に危険な紛争の火種は
東シナ海にも潜んでいる」と指摘。

日本側は中国船がわざとぶつかったのではないか
との疑いをもっている、と説明する一方で、
過去に香港や台湾の船が沈没したことを取り上げ、
「日本の船も攻撃的な作戦行動
をしてきた経緯がある」と、“どっちもどっち”的な視点をとっている。

 その上で、「日本は、脅されてすごすごと
引っ込みはしないということを示す必要はあるだろうが、
そのために尖閣を利用するのは危険だ」と、
日本側に自制をも求めた。

 こうした論調の背景に、
拡大の一途をたどる中国の軍事戦略への懸念
や不安があるのは想像に難くない。

 13日付同紙に掲載された
軍事戦略分析専門家の寄稿は
軍事的優位を保つことによって
周辺国を傘下に収めようとする中国の意図を、
冷戦時代にソ連がフィンランドを事実上の属国とした
例になぞらえて「フィンランド化」戦略だ、と喝破。

尖閣での事件には直接触れてはいないものの、
「米中の軍事バランスがこのまま悪化していけば、
(日本など)長年の同盟国や友好国は
フィンランドの例にならわざるを得なくなるかもしれない」
と警鐘を鳴らしている。(ニューヨーク 松尾理也)